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の私どもの社会がっくり出したものなのです。ひと言で言うならば、非人間化ということが現代社会の特色であり、それはますますこれから続いていくであろうと予想せざるを得ません。
それに対して医療、看護、福祉で働くということは、人間に始まり人間に終わるのです。非人間的な社会においていかに人格化させるかということが共通の課題です。
昨年の1月17日、阪神・淡路の大震災が起こって、私はその翌週に神戸に行きました。雨が降っていました。たくさんの若いボランティアが働いています。その雨の中に、自分の体を雨にぬらしながら、救済物資だけは雨にぬらすまいとひたすらかばいながら避難所に運んでいる若者の姿に感動しました。世間から無気力、無責任、無関心といわれている若者が、ニーズに直面したとき、身を粉にしてそこで苦しんでいる人のために役に立とうと立ち上がった。それが若者の真実の姿でもあるのです。そこに私は人間の優しさを見ました。優しいという字は「憂いに人が係わる」と書きます。憂いを分かち合うのです。苦しみを共有することによって、初めて優しさが生まれるのです。医療、看護、福祉で働くということは、その優しさが根底に要求されるということでしょう。
日本の社会を豊かにしたのは工業化に成功したからです。工業を興し再建するのにはいくつかの条件が必要です。たとえば港湾を整備しなければなりません。港をよくして原料を運び込む。そして製品にしてそれをまた搬出する。それには船が要る、飛行機が要る、産業道路が要る、汽車が要る、新幹線が要る。その整備によって工業化が達成されたのです。鉄1トンに水10トンと昔から申しますが、車をつくるのに実際には100トンの水が要るのです。その工業用水があるかどうかということが、工業化の決め手になります。この工業用水がなくて苦しんでいるところがいくつかあります。代表的なのが沖縄県です。しかし、もっと大事な要

 

 

 

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